我が名はこたろう

日々思いついたことを書き殴る。置き去りにしてきた青春を、三十路手前で取り戻したい。

ヘアスタイルがセミロングから「中華鍋」になった時の話

 

皆さんは、髪型が中華鍋になったことがあるだろうか。少なくとも、わたしの知る限りはわたしの事例以外にはない。

 

 

わたしの生まれは北海道の片田舎だ。

近くの牧場には牛や馬が放牧されていて、いつでもそれらを鑑賞することができる。

海もある。釣りもできる。

ただ、漁師町であったために治安が悪く品性のかけらもない大人達があまりよろしくない教育を子供達にし、子供達もまた品性のかけらもない大人になっていく。

 

子供のころはいけないことだと知らなかったが、今思えば知り合いの漁師が平気で密漁的なやつもやっていた。

 

正直スラムのようだったなと今になって思う。

(世の中の漁師さんが必ずしもそうってわけではない)

 

本題と離れてしまうので話題を戻すが

 

そんな田舎に住んでいたわたしは、髪を切るのはばーちゃんが通っていた「バーバー〇〇」だし、

洋服はお母さんが買ってきた、当時流行りの「ポムポムプリン」のトレーナーと、謎の赤い服の2着を着まわしていた。いわゆるヘビロテコーデってやつだ。

 

そのためわたしはその町から基本出ることはなかった。

 

 

そんなわたしが、中学生になったころ

隣町に新しくできた美容室に行くことになった。

 

美容室にだ。

 

個人的大事件だった。

バーバーから美容室だ。一気に大人に、女になる気がしてとても緊張したのを覚えている。

 

 

ちなみに当時のわたしの髪のステータスはと言うと、太くてハリガネのように硬い、毛量もえげつない。おまけに若干のくせ毛という絶望的な組み合わせ。

 

それでもきっと、かの有名な美容室という施設ならば、そんなわたしですら雑誌に載ってるカワギャルになれると淡い期待を抱いていた。

 

 

母の車でそこに到着すると、バーバーでは感じたことのない若者ニズム、なんともシャレオツな空間に圧倒された。

若干の真顔で迎え入れてくれたのは、なんだか偉いポジションにいるっぽい偉そうな女。でもわたしは安心した。若い男性が苦手だったからだ。

 

どれくらい苦手かというと、買いたいものがあっても、レジの店員さんが若い男性の場合はそのひとの勤務交代の時間まで商品を買わずに待つほどである

 

あ、ちなみに現在はというと若い男の子は大好きである。加齢というものは人格すらも変えてしまう。

 

 

 

いかん、話を戻す。

 

無愛想で偉そうな女でも、相手が若い男性じゃないことに安心したのだ。

 

「どんな感じにします?」

 

と、だるそーーーに聞かれて

緊張のあまり「ショ…ショショシ…ショートでお願いしまs」とだけ伝えた。

 

 

しかし、だ。

 

安心したのも束の間

そのいかにも無愛想で偉そうで本当に偉そうで人を鼻で笑ったり鼻で使ったりしそうなsadist体質の女がだ。

 

 

「髪の毛濃〜い。ハリガネみたい(嘲笑)」

 

と言い放ってきた。

田舎もん丸出し&緊張で完全無欠外面モード&本当にハリガネみたいな髪質のわたしは、愛想笑いをするしかできず、そのあとはその偉そうで偉そうな女(表現が面倒なので以下「奴」とする)と鏡ごしに目を合わせることなくただただうつむいてカワギャルになるのを待った。

 

 

カワギャルを待つ間、何度も聞こえてきた奴のかったるそうなため息と、部下の男性たちに対する高圧的で高圧的な指示。絶対に結婚できないタイプだ、少なくともわたしは間違いなくしたくない。男女雇用機会均等法の大失敗作だ。

 

 

 

数十分、経っただろうか。

 

「はい、いいですよ。どうですか(ハァ)」

 

 

と言われ、鏡に目をやった。

そこには間違いなく、寸分の間違いもなく

 

大きな中華鍋をかぶった自分が映っていた。

 

 

言葉を失った。

想像していたカワギャルになれなかったのはもういい、全然いいのだ。

 

 

高圧的オブ結婚できない女(奴)の嫌な空気にひたすら俯き耐えていた、その見返りがまさかの中華鍋。チャーハン作ったろか。あ?

 

 

本当に、何も言葉を発することができなかった。初体験だ。怒ることも、笑うことも、泣くことも許されなかった。

 

 

無言のまま、母の車に乗り込んだ。

乗り込んでから、やっと声を出して泣いた。本当に何十分も泣いた。母は黙っていた。

 

 

 

その後の記憶があまりない。

写真もない(おそらく全て処分した)。

 

 

 

 

 

数年の月日が経ち、いつしかわたしが大人になり、体が大きくなると共に態度も大きくなったわたし。今ならスーパー全身ムキムキ外国人に変身して奴の首を赤子のようにへし折るのも造作もない。

 

母との会話中当時の話題がでた。

 

 

あれは、本当に中華鍋以外のなにものでもなかった。なにもかける言葉がなかったけど、ひたすらに中華鍋だった。と母。

息できないくらいに大爆笑しました。

 

 

 

当時は笑えなかったけどな。マジで。本当に。あの女。いつか再会したらてめぇの頭も中華鍋にしてやるからな覚えとk

 

 

美容師の皆さん、いくら相手が容姿の醜い子供だからと言って手を抜いてはいけません。

 

数年後、その醜い子供達がスーパームキムキマッチョ全裸外国人髭モジャ格闘家になって舞い戻り、あなたの首をへし折りに来る可能性だってあるのですからね。